東野圭吾の同名小説を映画化した恋愛劇。脳移植により、ドナーの暴力的な人格に支配されてしまう主人公を演じた玉木宏と、それに苦悩する恋人役の蒼井優の熱演が感動を呼ぶ。
監督:佐野智樹
キャスト:玉木宏、蒼井優
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変身 (2006) / Henshin
ある病院の特別室で、長い昏睡から青年が目覚める。工場で働く成瀬純一(玉木宏)は、毎週金曜日に画材店に通っていた。その店で働く恵(蒼井優)は、笑顔がとびきり素敵な女の子だ。ある日、純一は勇気を出して、湖のある森に恵を誘う。それまで風景画しか描かなかった純一は、その日から恵の肖像画を描きはじめ、2人は急速に親しくなっていく。恵との幸せな日々をベッドの中で思い出していく純一は、ある夜、人のいなくなった解析室の中に入り、低温保存庫の中に人間の脳と思われる標本を2つ発見する。そのひとつには「JN」と記されていた。純一のイニシャルだ。彼は、それまで詳しい説明を言いしぶってきた担当医師の堂元(北村和夫)に手術の詳細を問いただす。彼が施されたのは、世界初の脳移植手術であり、損傷を受けた部分に他人の脳片を移植したのだと聞かされる。あの日、純一は恵と一緒に住む部屋を探すために不動産屋にいたのだった。そこに1人の青年が入ってきて、拳銃を振りかざし、金を要求した。その時、奥のスペースで遊んでいた少女が何も知らずに出てきて、その音に驚いた犯人は少女に拳銃を向けた。その時、とっさに少女をかばった純一の頭部に銃弾が撃ち込まれたのだった。退院が近くなった時、やっと面会を許された恵が訪ねてきてくれる。だが、純一は、以前とは食べ物の好みが一変し、描く絵のスタイルも変化する。そればかりか、勤め先の工場でも、以前は人と争うことなど皆無だったのに、同僚たちの仕事ぶりを痛烈に批判し、アパートの隣に住む若者に殺意さえ抱いてしまう。そして愛する恵の天真爛漫な言動にさえ、いらだちを抑えきれなくなるのだった。そんな純一の耳に、どこか遠い記憶の彼方から、ピアノの音が聞こえてくる。それは純一の記憶ではなかった。苦悩を深める純一が偶然出会った女性は、あの強盗犯、京極瞬介(松田悟志)の双子の妹(釈由美子)だった。兄妹の育った家で、強盗事件の発端になった彼らの生い立ちと恨みを彼女は純一に語ってくれる。彼女が語る瞬介は優しい青年だったが、父への恨みから世の中全体を、特に金銭的に恵まれた者たちを激しく憎むようになっていたのだ。そして彼女は、純一の前に赤い小さなおもちゃのピアノを差し出す。幼い日、いつも瞬介はこのピアノを弾いていたという。こうして純一はすべてを知るが、だからといって変わっていく自分を止めることは、彼の力ではできない。彼の本当の葛藤は、ここから始まるのだった。